2014
08.29

これからの勤務医に求められるスキル『腫瘍内科』

以下は、「ドクターズキャリアマンスリー」2014年4月号に掲載された記事の転載です。
http://www.recruit-dc.co.jp/doctorskill/doctorskill03.html

これからの勤務医に求められるスキル『腫瘍内科』

抗がん剤の副作用対策は必要不可欠の専門スキル

「抗がん剤治療において最も大事なことは、起こり得る副作用を熟知し、きちんと対策が行えること」と明言するのは、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之氏だ。たとえば白血球減少は抗がん剤の副作用としてほぼ必発であり、白血球減少時の感染は抗がん剤の副作用死の原因のトップだ。抗がん剤を使うからには、感染症対策はもれなく心得ておかねばならない。

ところが、白血球数が下がるとすぐに抗がん剤の量を減らす、一週間に何度も採血する、白血球を増やすG-CSFを過剰に使う、生ものを食べることを禁止する、入院させる、マスクをさせる…などなど、対応には誤解も多い。「白血球減少時には特定の抗生物質を用いる」とガイドライン(*1)にも明記されているが、実際には、不適切な抗生物質の使用による死亡例も少なくないという。

下痢も侮れない。幅広い癌腫に用いられるイリノテカンが引き起こす重篤な下痢は、脱水症状で死に至ることもある。遺伝子検査で高リスク者の抽出が可能になった現在でも時折起こる。「唯一、助ける手立ては大量ロペラミド療法(*2)」(勝俣氏)。海外では標準的なこの治療もわが国では知らない人の方が多い。仮に知っていても、通常の6倍量のロペラミドを実際に用いるのには勇気が要る。副作用対策を含む腫瘍内科のスキルは、理論だけでなく、手本となる指導者についてベッドサイドで学ぶ必要があるのだ。

腫瘍内科に必要なのは、知識と経験、コミュニケーションスキル。きちんとした研修施設であれば、3ヵ月である程度抗がん剤治療のマネジメントが体得できる。

国立がん研究センター勤務時代には地方の外科医の1ヵ月研修も受け入れてきた。「誤解を恐れず極論すれば、1日2日見学するだけでもいい。自分たちがやっていなかったアプローチを目の当たりにして、目から鱗が落ちるだけでも、必ず得るものがある」と勝俣氏は考える。

この領域では最新のエビデンスについていくことが必須であるが、それを障壁と感じる医師も少なくない。勝俣氏は、「EBMの基本は、いかに早く最新最良のエビデンスを簡便に見つけるか。ノウハウさえ掴めば誰にでもできる。教えます」と話す。
「見捨てない」「引き際を知る」そのために必要なスキルは?

腫瘍内科の真のスキルはディシジョンメーキング(治療方針の決定)に集約されるが、同時に、それをきちんと伝えるためのコミュニケーション能力も問われる。

がん医療の目標は『治癒』とは限らない。医師が患者から逃げずに、最後まで共に考え支える。

「もう治療はありません」と言い放つのは言語道断だが、延命効果が望めないことをわかっていながら、亡くなる直前まで抗がん剤治療を続けることも、コミュニケーション不全が生む悲劇だと勝俣氏は指摘する。
基本は内科だが、がん診療にあたる外科医への期待も大

日本臨床腫瘍学会の認定するがん薬物療法専門医の数は現時点で900名に満たない。これでは、地域偏在どころかがん診療連携拠点病院への配置さえおぼつかない。一方、患者・家族、拠点病院以外の施設からも腫瘍内科のスキルは強く求められており、専門医不足とニーズとの隔たりを埋める医師の育成は急務だ。

勝俣氏は「その名の通り、内科の素養があることが基本だが、日々がん薬物療法の難しさ、診療の不全感に悩む外科医もぜひ一歩踏み込んで、確かなスキルを身につけて欲しい」と願う。そうすることで、治療効果も患者満足度も、人材としての価値も確実に上がるはずだ。

*1 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン 日本臨床腫瘍学会 (編集) 南江堂2012

*2 本邦では用法・用量が適応外。
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