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2014
03.30

PET検診は勧められない

■全てのがんに、早期発見早期治療が有効というわけではない。検診が有効ながんは一部のみ。PET検診は勧められない。

この原稿は、Medicina 2013年09月号 (通常号) ( Vol.50 No.9)に寄稿したものです。

全てのがんに、早期発見早期治療が有効ではない。

がんの進行は、非常に緩徐に進行するものから、急速に進行し、あっという間に死に至るものまでさまざまである。

早期発見早期治療は理論的には良いように思われるが、緩徐に進行するがんや、急速に進行するがんには、適応することはできない。がん検診を考える場合、検診がどこまで有効かどうかを知っておく必要がある

。有効性の評価をするには、発見率だけではいけない。がんの発見率が高くなったとしても、最終的にがんの死亡率まで下げることができなければ、検診を勧めるだけの意味がない。

厚生労働省は、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんを科学的根拠に基づくがん検診として、推奨している1,2が、このうち、国際的にも、ランダム化比較試験、メタアナリシスでのエビデンスをもって推奨されているのは、乳がんのマンモグラフィー3、大腸がんの便潜血検査4のみである。

最近では、乳がんマンモグラフィー検診で、早期がんは増えたが、進行がんが減っていないことのアンバランスから、乳がん検診は過剰診断が行われているだけであり、検診の利益は少ないのではないか、ということがNew England Journal of Medicineに投稿され、乳がん検診の是非が話題になっている5。

 このように、がん検診に対するエビデンスには限りがあり、全てのがん腫に適応できるものでもない。また、検査による過剰診断、偽陽性の問題もあり、適応は慎重であるべきである。PET(Positron Emission Tomography)検査は、特異度が高く(約95%)、近年多くのがん腫の病期診断、治療の評価として使われるようになってきたが、検診として勧めるだけのエビデンスは確立されていない。国立がん研究センターの研究で、PET検査は従来の検査に比べて、感度が低く(17.8%)、従来検査で見つかったのに、PETで見落とされていた偽陰性率が高かった(82.1%)ことを報告している6。

文献
1. 独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター: 有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順.http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/matome.html, 2005
2. 健発第0331058号厚生労働省健康局長通知: がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針について. http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf, 2008
3. Gotzsche PC, Nielsen M: Screening for breast cancer with mammography. Cochrane Database Syst Rev:CD001877, 2011
4. Hewitson P, Glasziou P, Watson E, et al: Cochrane systematic review of colorectal cancer screening using the fecal occult blood test (hemoccult): an update. Am J Gastroenterol 103:1541-9, 2008
5. Bleyer A, Welch HG: Effect of three decades of screening mammography on breast-cancer incidence. N Engl J Med 367:1998-2005, 2012
6. Terauchi T, Murano T, Daisaki H, et al: Evaluation of whole-body cancer screening using 18F-2-deoxy-2-fluoro-D-glucose positron emission tomography: a preliminary report. Ann Nucl Med 22:379-85, 2008




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