2013
08.02

チーム医療って何?

 「チーム医療」をしましょう、などとあちこちで言われます。がん医療というのは、単独の診療科、単独の職種でやっていけるものではありません。複数の診療科や、複数の職種で、お互いの専門性を元に、患者さんのための最前な医療を目指していくことが大切です。手術をする外科医、抗がん剤を担当する腫瘍内科医、放射線治療を担当する放射線治療医、また、患者さんの精神面にアプローチしていくのは、精神科医、緩和ケアを担当するのは緩和ケア医と、個々の診療のプロが集まり、最善の医療が行われることが理想的な姿と思われます。医師も万能ではないですから、医療チームで患者さんのより良い治療・より良いケアを考えていくことは当然のことです。よく考えてみると、チーム医療などというのはあたりまえのことと思います。

 しかし、実際の医療現場では、どうなのでしょうか?これは医療現場にいる人でないとわからないと思いますが、日本の医療現場では、この「チーム医療」がなかなかうまく行われていない現状があるのです。「チーム医療」がうまく行われていないので、「チーム医療が大切」、などということが、叫ばれたりしているのだと思います。厚生労働省も、(「チーム医療の推進に関する検討会」などをやったりしてhttp://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/s0319-9.html 、チーム医療を推奨している、といった具合なのです。本来ならば、医療現場であたり前のこととしてなされていれば、厚生労働省がわざわざ検討し、報告書などをつくらなくてもよいように思います。

 実際の医療現場で、チーム医療を阻んでいるのは、残念ながら、「医師」なのです。本来なら、医師が中心となって、チーム医療を進めていかなければいけませんが、医師の理解が乏しくチーム医療ができていない現実があります。

 チーム医療には、腫瘍内科や、外科医、放射線治療医、精神科医、緩和治療医などの複数の診療科がチームをつくって患者さんのケアに当たるチーム医療と、医師、看護師、薬剤師、栄養士や、ソーシャルワーカーなどのコメディカルを含んだ多職種によるチーム医療があります。複数の診療科によるチーム医療として、キャンサーボードがあります。これは、がん診療のスペシャリストが集まって、患者さんの最前の治療方針を決めるカンファレンスのことですが、がん拠点病院の基準にも盛り込まれています。日本では、がん研有明病院がいち早く導入して、日本全国に広がりました。こうしたカンファレンスは、どんどんやってほしいと思います。時には議論が白熱し、外科と腫瘍内科医が激しい議論をすることなどがありますが、患者さんの最前の治療方針を決めるためにするカンファレンスですから、それもよいと思います。日本医大武蔵小杉病院では、キャンサーボードを月に1度公開で行っていますので、ご興味のある方は一度見学にいらしてください。

 多職種のチーム医療も大切です。以前、埼玉医大で抗がん剤過剰投与事件http://mrm21.net/court.html が起きました。耳鼻科領域にできた肉腫と診断された女子高生古館友理さんが抗がん剤の過剰投与で死亡した事件ですが、主治医の抗がん剤の過剰投与の指示を、他の医師はおろか、看護師や薬剤師も誰も指摘できなかったことは不幸なことだったと思います。おそらく、少なくとも薬剤師は気づいていたと思われますが、それを医師に指摘できる状況でなかったことが原因と思います。患者さんのために、ベストと思われることが、医療者間で遠慮なく言い合うことができるのがチーム医療なのですが、なかなか医療の実際の現場では実行できていないのが現状なのです。誰でもミスはありますから、それをチームで補うことで、医療ミスや事故を防ぐこともできるのです。抗がん剤は少しの間違いでも大変なことになりますので、細心の注意が必要なのですが、こういう私も、抗がん剤のオーダーミスをこれまで何度もしたことがありますが、その都度、看護師さんや、薬剤師さんの指摘により事なきを得ています。

 チーム医療に必要な要素は、リーダーシップ・ミッション、コミュニケーション、EBM(科学的根拠に基づく医療)の3つが大切と言われます。

 リーダーシップとは、誰かがやってくれるだろうではなく、チーム一人一人が、リーダーシップをもつことが大切です。また、何のためのチームなのか、「ミッション」をつくり、共有していくことが大事です。「何のための」か、というミッションを忘れますと、業務が忙しくなるとか、皆の協力が得られないからといった理由で、チーム医療が滞ってしまいます。

 また、コミュニケーションは、チーム医療をする上で、もっとも大切なことと考えられています。先ほど述べた抗がん剤過剰投与事件でも、コミュニケーション不足が医療事故につながりました。チーム医療を最も阻んでいるものが、医師であると言いましたが、医師とのコミュニケーションがうまくとれずに、チーム医療がうまくいっていない事例が最も多いのです。気難しい医師、言うことを聞いてくれない医師は、どこにもいるものですが、チーム医療をやろうとミッションを持った者が、根気よくこうした医師とうまくコミュニケーションを取っていくことによって、良好なチーム医療が形成されます。患者さんとしても、医師とのコミュニケーションに悩まれる方も多いと思います。コミュニケーションのこつとしては、相手を変えることはなかなかできませんから、こちらから、色々な手を使って、うまくこちらの想いを伝えることが大切です。事実を感情を交えずに淡々と伝え、前向きな感情表現をし、相手のことも思いやった上で、こちらの想いを伝えるというような、アサーティブ・コミュニケーションも参考になります。

 最後に、EBM(科学的根拠に基づく医療)ですが、これは、最新・最前のエビデンスに基づいた医療のことですが、医療者はエビデンスの入手手段、エビデンスの吟味をきちんとでき、患者さんに最前の医療ができるようにすることが大切です。また、得られたエビデンスは、チーム内で共有できるようにするとよいと思います。

 より良いチーム医療をすることは、患者さんに最善の治療をしていくことにつながります。医師の役目として、手術ができる、抗がん剤をきちんとできる、ということも大事なのですが、自分の限界を知り、適切なチーム医療ができる医師がより「プロフェッショナルな医師」だと思っています。

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