2013
04.01

生ものはどんどん食べましょう

抗がん剤に関する誤解は多々ありますが、これもよくある誤解ですね。「白血球が減ってきたら、生野菜や、くだもの、刺身やお寿司などの生ものを避けましょう。」などとは、よく言われることでありましたが、はっきりとしたエビデンス(科学的根拠)はありませんでした。生野菜などは、細菌などがついていることが多いので、感染症予防のために、避けておきましょう、という理論に基づくのだと思いますが、白血病などでの強力な化学療法をやる場合は、ともかく、乳がんなどの抗がん剤治療では少々白血球が下がることがありますが、感染症のリスクは大きくはありません。今でも多くの施設で、「抗がん剤中は、生ものを避けましょう」などと言っているところが多いというのが現状です。患者さんは、真面目なものですから、抗がん剤中、ずっと生野菜、寿司などを控えている人がいます。中には、再発してから、ずっと生ものを食べておらず、「私は、お寿司が大好きだったのですが、もう2年間もお寿司を食べていません。」という方がいらっしゃって、私が、「生ものを避ける必要はないのですよ」と言うと、涙をこぼして喜んでいました。

 実は、抗がん剤治療中に、生ものを摂ってよいかどうか、という研究はいくつかありますが、2008年に、Jounal of Clinical Oncology 26:5684 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Jounal+of+Clinical+Oncology+26%3A5684に報告されたものが最も有名でありますが、急性白血病で導入化学療法を受ける患者153名を、生もの摂取を禁止する群と、生ものを可にする群とランダムに分け、感染症発症率を比較しましたが、感染症発症率には有意差はありませんでした。急性白血病のような骨髄抑制が強い抗がん剤をやる領域でも、このような結果ですから、乳がんなどの固形がんでは、生ものを摂ることが感染症発症のリスクになるとは到底考えられません。これらの報告を受け、2013年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドライン(J Clin Oncol Feb 20, 2013:794-810 http://jco.ascopubs.org/content/31/6/794.abstract?sid=7cb7eae3-5c3c-410e-bf07-9e3002e0180c)では、「抗がん剤治療中に、生ものを禁止することは勧められない」、としています。このガイドラインでは、マスクをすることも推奨していません。実は、マスクをすることも感染症を予防するエビデンスはないのです。日本では、なぜかよく見かけますよね。

 患者さんによっては、生ものどころか、「がんに効く?」からと、肉類を摂るのも一切止め、毎日、玄米や穀類のみというような仙人のような食事をしている方がいます。もちろん、喜んでこのような食事ができる人ならよいでしょうが、仙人のような食事はつまらなく、「生活の質」も低下します。がん治療では、「生活の質」を保つことも、大切な治療目標の一つです。最近の研究では、「生活の質」を高めることが、がんの延命治療にもつながる、というような研究結果も報告されていますので、このような誤った食事療法はただちに止めて、おいしく食べられるものをいただき、楽しく食事をすることで「生活の質」を高めることが大切に思います。

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