2013
04.01

ATLAS試験の功績は?~国際臨床試験の集大成~

以下の記事は、
ケアネットに掲載したものを転載しています。
http://www.carenet.com/news/clear/journal/34041

オリジナルのジャーナルは
ER陽性乳がんへのタモキシフェン10年延長投与、再発・死亡リスクをさらに低下/Lancet
http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33932
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23219286

乳がんに対するホルモン療法の臨床試験は、古くから行われているが、このATLAS試験は、これまで行われたホルモン療法・抗がん剤の臨床試験の中で最も大規模な臨床試験であったと言える。全世界36ヵ国、10年かけて1万2,894名の患者が登録され、日本からも137例が登録された。タモキシフェンを5年飲むのがよいのか、10年飲むのがよいのか? という臨床的疑問に答えるべく、この試験は開始されたのであるが、膨大な準備と計画により成し遂げられたこの成果は、賞賛されるべきと言ってよいと思われる。しかも、この試験は、製薬企業のスポンサーではなく、英国オックスフォード大学の研究資金により行われた。さすが、ランダム化比較試験の生みの親の国と言ってよいだろう。

ATLAS試験は、筆者の前任地の病院でも参加していたが、患者の適格基準が、乳がんで術後にタモキシフェンを5年内服した患者はすべて登録可能であり、細かい除外基準など一切なし、というものであった。近頃の治験などでよくあるように、何十項目もある適格基準・除外基準でガチガチに厳選された患者を対象とするのではなく、より臨床現場に近い患者を対象にという、pragmaticなデザインであったことは、当時としても画期的であったと思われる。

 振り返って結果はというと、本来のプライマリー解析は、全登録例における死亡の減少であった。今回は、エストロゲン受容体(ER)陽性例に対する解析を行ったということで、サブ解析になるのであるが、5年より、10年内服する方が、全死亡の低下、乳がん死リスクの低下、乳がん再発の低下をもたらしたというものである。

 試験開始から解析・公表までに、17年も過ぎたこの結果が、実際の患者に応用できるかというと、閉経後乳がんには、現在はアロマターゼ阻害薬が標準治療になっているので、応用不可であるが、閉経前乳がん患者には応用可能である。閉経後乳がんに対しても、より長くホルモン療法をやった方が、再発予防効果をもたらしたというATLAS試験の結果は、今後大変参考になるものと思われる。

 いずれにせよ、ATLAS試験がもたらした功績は、試験の結果に加えて、臨床試験のあり方、研究者主導の国際共同試験のあり方に大きな希望と勇気を与えてくれるものであったと思われる。わが国では、まだまだ研究者主導臨床試験においても、先進国の中でかなり遅れをとっているので、このような臨床研究からもっと多くを学んでほしいと願うものである。
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