2013
02.14

抗がん剤をやらないという選択について

「抗がん剤は効かない」などという本が、有名になりまして、抗がん剤に抵抗感を持つ人も少なからずいらっしゃると思います。逆に、抗がん剤をやらないというのは、とても不安でやりきれない、という人もいらっしゃると思います。大切なことは、抗がん剤は、効く、効かない、やる、やらない、のでありません。抗がん剤は万能ではありません。副作用が強いお薬ですし、効果も限られています。患者さんにとっては、メリットがありますが、デメリットも大きい治療です。ですので、抗がん剤をやるのかどうかに関しては、がんの種類によっても、がんのステージによっても、臓器機能や全身状態、患者さん個人の生活の状況によっても、メリットやデメリットは大きく異なってきますので、個別に考えていくのがよいと言えると思います。

 腫瘍内科医は、抗がん剤が専門だからと、抗がん剤ばかりをやる冷たい医者ではないかと誤解されてしまうことがあります。実は、腫瘍内科医という抗がん剤の専門医だからこそ、抗がん剤の良い点、悪い点、限界を知り尽くしているからこそ、患者さんに、「抗がん剤をやらない選択」というのをうまくお話できるのではないかと思っています。

 Kさんは、卵巣がんで手術を受けましたが、残念ながら再発をし、その後は、抗がん剤の治療を続けていました。卵巣がんは、乳がんと同じように、抗がん剤に感受性は比較的高く、再発をしても、うまく抗がん剤を使って、うまく共存をすることができるがん腫です。Kさんへの抗がん剤もそこそこ効果があり、抗がん剤をする度に、再発したがんの転移が縮小し、少し抗がん剤を休んでは、また繰り返すということを続けていました。しかし、次第に、抗がん剤が効かなくなり、腹水がたまってきました。それでも抗がん剤をやることによって、腹水も何とかコントロールできていましたが、週に2度ほど3~4リットル腹水を抜かないとやっていけないようになりました。これ以上抗がん剤を続けることはデメリットの方が大きくなると考えられたため、抗がん剤を続けるのを止めることについて話し合いました。Kさんも当初は抗がん剤を止めることには抵抗感がありましたが、相談した結果、抗がん剤を止めることにしました。すると、不思議なことに、抗がん剤を止めてから、腹水を抜く頻度が低下し、数週間後には、全く腹水がたまらなくなりました。あれほど悩んでいた腹水がたまらなくなったのです。Kさんは、食欲も出てくるようになり、腹水穿刺を頻繁にする必要がなくなったので、家族に連れられてドライブを楽しむこともできるようになりました。

 最近、むやみに抗がん剤をやらない方が、QOL(生活の質)を上げ、生存期間も延長させるといった研究が海外から報告されていますが、まさに、そのような状況を見たような気がしました。もちろん、Kさんのような例は特殊なケースであると思いますが、抗がん剤を続けるということは必ずしも患者さんのメリットになるわけではない、ということを身をもって体験させていただいたと思いました。


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コメント
**がんセンターの標準治療の中身を知れば、EBMがどんなに虚しいものなのかよく判ります。がんになってから慌てても、満足な判断は出来ないので、いろいろ調べましたが、治らないがんという状態になったら、つまり手術も放射線もダメということですが、標準治療の毒薬満載→緩和ケア行き、がん難民となって転院先を必死で探すしかないという、**がんセンターでは腫瘍内科送りになる前に逃げ出す必要有りと結論しました。
日本医大の小杉は、良い病院ですね。患者中心で考えてくれて、スタッフがとても良いです。差額ベッド代が高いのが難点ですが(笑)。
先生の仰る通りです、やっと気付いてくれましたかです(失礼で御免なさい)、カプランマイヤー曲線は、患者には無意味です。近所に、先生のような腫瘍内科の先生がいること、とても安心いたしました。これで、がんと言われても、慌てなくて済みます。
gobくんdot 2013.05.30 17:25 | 編集
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