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2012
02.28

奇跡の○○療法、5年生存率0%からの生還!?

本日歯医者に行きました。待合室に、「奇跡の○○療法、5年生存率0%からの生還」などという本が置いてあってので、順番を呼ばれる間、読んでいました。

著者は何と、現役のお医者さんでした。その先生が、大腸がんになり、手術を受けたそうです。リンパ節に転移があったので、主治医からは、5年生存率20-30%と言われ、抗がん剤のUFTを飲んでいたそうです。

その後、残念ながら、肝臓に転移、再発したということなのです。2個転移があったということで、主治医からは、手術で切除するか、抗がん剤動脈注射をするかと言われたそうです。その先生は、その時点で、5年生存率0%と思ったということなのです。再発がんというのは大変困難な状況であり、通常は治すことは困難です。その先生も医学生の時の知識で「再発したら、治癒不能、5年生存率0%」と思いこんでいたのでしょう。それで、積極的な治療を拒み、抗がん剤を拒否し、エタノール注入を選んだということなのです。

その後、肝転移に対して、エタノール注入治療が終了した後、その先生は何とかこの病気を治すことができないものかと色々と探索し、○○療法という食事療法を中心とした治療に出会ったということなのです。オリジナルの○○療法をやるのはちょっときついので、ご自分の名前をつけて、○○式○○療法というのをあみ出し、その療法を続けていたそうですが、見事に5年経っても、再発が見られず、10年経っても再発がない、ということなのです。

その結果、その先生は、自分のあみ出した「○○式○○療法が効いた」、とこうやって本にまでして今や全国的に啓蒙(宣伝?)活動をしている、ということなのです。

なるほど、ちょっと読んだ感じでは、○○式○○療法が効いてよかったんだね、と思うかもしれませんが、明らかにおかしい点が2点あります。

1.本当に5年生存率0%だったのであろうか?
2.エタノール注入治療を受けていたのに、○○式○○療法が効いたと言ってよいのだろうか?

という点です。

種明かしをすると、大腸がんの肝転移の文献を調べてみますと、世界中には何千という患者のデータをまとめた文献があり、実は、大腸がんの肝転移というのは、手術をすることによって、長期生存例が得られることは、がん専門医の間では常識なのです。文献的には、少なくとも13の論文(英文)、計10755名の患者の結果の報告があり(Uptodateより)、5年生存率は、24 から58パーセント、平均で40%とされています。5年生存率0%どころか、40%も長期生存が期待できるということなのです。また、10年まで再発なく生存すると、「治癒した」と言ってよいと思いますが、大腸がん肝転移の10年の手術成績は、17%と報告があります(J Clin Oncol. 2007;25(29):4575)。17%の方が治癒した、ということです。このように、大腸がんの肝転移は、全身転移の状況を示しているのではなくて、肝臓だけにとどまることが多いので、局所治療がよく奏効する、ということなのです。

また、手術以外の 例えばラジオ波治療でも、14-55%の5年生存率が報告されています(J Clin Oncol. 2010;28(3):493)ので、何らかの局所治療が有効なのは明らかです。

従って、エタノール注入治療後に、○○式○○療法をやって、5年生存が得られたと言っても、エタノール注入治療で十分効果が見られるので、とても○○式○○療法が効果があったと言えないことは、誰が考えてもわかると思います。

そもそもこの先生は、大腸がん肝転移の状況を5年生存率0%と大きな勘違いをしていた、ということと、手術以外の局所療法でも治る方が多い、というエビデンス(科学的根拠、文献)を知らなかったということです。

このように、お医者さんでも、専門外であるとこのような状況なのです。お医者さんが言っているから真実だ、とは全くもってあり得ないことなのです。

このような間違った情報をどうやって見分けるのか?に関してですが、以前に私が書いた、「インチキ治療の見分け方」を見ますと、3.体験談が載せられている 5.奇跡の○○治療、末期がんからの生還 の2つに当てはまりますね。

このお医者さんは、ご自分の療法が正しいと思ってやってらっしゃるので、料金などは高額ではなくて、良心的なのでまだ良いのでありますが、恐ろしいのは、お医者さんの中では、インチキだということをわかっていて、「○○治療が効く」と言って、保険の効かない高額治療をふっかけてくることなのです。要は、がん患者さんの弱みにつけこんだビジネスをしているクリニックが多いことなのです。何も知らない患者さんは簡単に騙されてしまうのです。

お医者さんでもインチキやっているとわかっていない人もいるくらいですから、この問題は根が深いと思います。正しいがん情報がいかに発信されていないのか、ということにつきると思っています。

まずは、皆さんには、くれぐれもこういった情報に惑わされないように注意していただきたいと思います。
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コメント
こんにちは。kuwachannのハンドルネームで6年近く食道癌のブログを書いています。

私は6年近く前に米国で食道癌にかかり、摘出手術、化学治療、放射線治療を受けました。その際、患者のケアマネジャーとして、全ての治療をコーディネートしてくれた腫瘍内科医の役割と機能に感動しました。

ケアマネジャーとしての腫瘍内科医制度が日本に確立すれば、転移、再発による癌難民、あの手この手の民間治療に踊らされる患者さん達の数が減るのにと強く思います。

まだまだ日本では少数派の分野だと思いますが、パイオニアとして是非頑張って下さい。

もしかしたら私のブログ、米国の癌治療、腫瘍内科の実情を知る上で参考になるかもしれませんので、時間がおありの時にご覧になってください。

http://d.hatena.ne.jp/kuwachann/
kuwachanndot 2012.02.29 02:15 | 編集
はじめまして。

この本を知人からいただき
一時期 部分的に生活に取り入れたことがありました。
短期間とはいえ 愚かだったと思います。

ブログにリンクさせていただきました。
soradot 2012.02.29 09:28 | 編集
kuwachannさま

コメントありがとうございます。参考にさせていただきます。また何かコメントがありましたら、よろしくお願いします。

勝俣範之dot 2012.02.29 09:49 | 編集
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dot 2012.03.28 11:18 | 編集
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