2012
02.29

がん患者さんの食事について

Category: Q and A
毎日のようにがん患者さんから質問されること、それは「食事について」です。

日常生活で食事をどうすればよいのか?
とよく聞かれますが

答えは、
「何でもおいしいと思うものを食べてください」
です。

抗がん剤治療中などで、味覚異常が出ている場合には、「おいしく食べられるものを食べる」ということが大切です。
抗がん剤で白血球が下がった時には、生もの(お寿司や生野菜)を避ける方がよい、などと言われますが、白血病の骨髄移植をやっているような状況でありましたら、そのように注意することもありますが、血液がん以外での抗がん剤治療はそれほど白血球なども減りませんから、生ものを避ける、などということも必要ありません。
つまり、がん治療中の食事制限などほとんどないのです。

患者さんは、インターネットや、書籍やらで色々と調べてきて、がんには、「肉がよくない」「野菜だけにすべきだ」「玄米にすべきだ」「塩分がよくない」「粉ミルクがよい」やら、「ビタミンがよい」やら、限りなく日常の食事について調べて、また、ほとんどの人が、食生活については、反省すべきと感じているので、これではいかんと、自ら制限して病気を何とかして少しでもよくしたい、と一度はどんな患者さんでも試すのがほとんどだと思います。

実際のところ、どうなんでしょうか?
科学的根拠(医学文献、医学論文)、科学的に吟味するとどうなるか?ということでありますが、
がん補完代替療法ガイドラインを見ていただいてもわかりますが、一つとして推奨するだけの科学的根拠は全くない、というのが現状です。

実際には、医学論文が全く報告されていないというわけではなくて、あっても、レベルの低い研究論文(レベルの低い研究論文とは、症例報告や、効いた人だけを集めた報告~ばかりなのです。症例報告や効いた人だけを集めた報告がなぜいけないかというと、患者さんの選択バイアス(良い結果だった人だけを報告するというもの、効かなかった人はどれくらいだったのか公表しない)であったり、効果の評価方法があいまいだったり(奇跡の○○式○○療法で書いたように、他の治療と併用していたら、どの治療が効いたのかわからない)、はてまた、データのねつ造なんかもあるからです。

医学研究の中で、最も信頼できる情報とは、「ランダム化比較試験」という研究の結果です。治療法を対照群と新治療群にランダムに振り分けて結果を評価するという研究手法ですが、日本ではこのランダム化比較試験という医学研究が大切であるということが、医学教育の中でもあまりきちんと教えられていないということもあり、実際の医学研究としても、日本では多く行われていないという現状があります。

現在、多くのがん治療ガイドラインが日本でも作成されていますが、エビデンスレベルが高い(科学的根拠、優れた医学研究、医学文献がある)ものを元にして作成されています。逆に言うと、エビデンスレベルが低い治療法はガイドラインでもあえて触れておりません。各種がんのガイドラインには、このような食事療法に関しては、あまりにもレベルが低いエビデンスしかないために、治療法としても取り上げられていないという状況です。

私の経験というレベルの低い情報(それでもこれまでに何百人も経験がありますが)ですが、これまで、私の患者さんでもたくさんの患者さんが、○○食事療法とやらを実践されていますが、その中でお一人でも、○○食事療法が著明に効果のあったと思われるような患者さんがいれば、少しは信じたい、という気もおきますが、残念ながら、これまでそのような方は一人もおりませんでした。

ましてや、「がん」と診断され、また抗がん剤や放射線のようなつらい治療を受けている最中で、修行僧のように、無理して○○食事療法をやっている患者さんがかわいそうでなりません。つらい食事療法などやっているよりは、おいしいものを食べた方がよっぽど元気になりますし、生活の質も向上します。

○○食事療法でがんが治ったなどというものがあったら、やはりインチキ治療の可能性が高いので、十分に注意しましょう。
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